新型コロナウイルスの影響でおうち時間を過ごす機会が増えたことにより、通信販売を利用する方が増えました。そのことがきっかけで物流業界は昨今、高い注目を集めると同時に負担がかかっている状況です。
物流にかかるコストダウンを図るために様々な改善を図っている方や、どのようにしたらいいのかわからない方もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事では物流にかかるコストの詳しい内訳やコスト削減が必要な理由、物流コストを削減するためのポイントなどを紹介します。
物流コストとは?
物流コストとはその名のとおり、物流にかかるコストのことです。一般的に、物流コストはトラックや船・飛行機などで商品を運ぶ際にかかる費用をイメージしがちですがそれだけではありません。
実際には、保管場所の維持費用や梱包材料、人件費、倉庫内の管理システムなどの運用やメンテナンス費用なども含まれています。
商品を届けるために必要な費用が全て物流コストに含まれているのです。
物流コストの内訳
物流コストは物流費の支払い形態別で見ると以下の3つにわけられます。
- 支払形態
- 物流機能
- 物流プロセス
それぞれの観点で物流コストの詳細をみていきましょう。
支払形態
支払形態は外部に支払う支払物流コスト以外にも、自社内で発生する社内の物流コストも含まれます。
1つずつ詳しく解説します。
支払い物流コスト
支払い物流コストは最もイメージしやすい物流コストなのではないでしょうか。具体的には以下の3つが該当します。
- 車両・鉄道・船・飛行機などのの運賃
- 倉庫のレンタル費用
- 事務作業・梱包作業などの外注費
支払い物流コストをカットするためには内製化を図ったり、価格交渉をしたりする必要があります。ただし、運賃は組織単体で値下げを図ることは困難であり、助成金を活用してコストカットするなどの方法があります。
自家物流コスト
自家物流コストは自社の中で発生するコストのことを指し、以下のような内容が該当します。
- 社内で発生する人件費
- 各種システムの運用費
- 所持しているトラック・倉庫のメンテナンス費や保管費
- 減価償却費など
業務の効率化を図ることで人件費を抑えることが可能なため、改善を図りやすいです。
物流機能
物流の機能別に分類すると、以下のようなコストが発生します。
- 輸送・運送費
- 保管費
- 荷役費
- 物流管理費
各コストの詳細を1つずつみていきましょう。
輸送・運送費
物流の輸送・運送にはトラックや船、航空機などが利用されますが、それにかかる費用が該当します。
トラックを使用する場合には高速料金や燃油料、整備費用なども含まれます。
保管費
保管費は荷物を倉庫に保管するコストのことを指します。小規模の物流業者の場合は倉庫が不要な場合がありますが、多くの荷物を取り扱う場合は倉庫の確保が必要です。
外部の倉庫や物流センターに保管を委託する場合は保管料がかかります。保管料は寄託保管料と坪貸し保管料の2種類があり、それぞれかかるコストが異なります。
入出庫料として荷物を倉庫に入庫したり出庫したりする際にもコストが発生するため、保管する際のコストも考慮しなければなりません。取り扱う商品によっては冷蔵施設が必要となり、コストがかさむ可能性もあります。
荷役費
荷役費とは荷物を出し入れする際の費用や運搬、積付け、仕分け、ピッキングなどにかかるコストのことです。具体的には以下のような費用に分類されます。
- 入庫費:倉庫や物流センターに荷物を入庫する時にかかる費用
- 出庫費:荷物を出庫する際に必要な費用となり、ピッキング料として計上されるケースもある
- 流通加工費:商品を流通させるために実施する検品やX線検査、シール貼りなどの費用
- 梱包費:出荷するために荷物を梱包する際に必要な費用。人件費だけでなく段ボールやクッション材、テープ類も含まれる
- 輸出にかかる諸経費:商品を輸出する際にかかる通関料や手数料などの費用
物流管理費
物流管理費とは物流を管理するためにかかるコストのことです。入出庫や伝票発行業務にかかる人件費が該当します。
物流プロセス
物流プロセスとして物流コストを捉えた場合、以下3つのコストが発生します。
- 調達物流費
- 社内物流費
- 販売物流費
各物流プロセス別の詳細をみていきましょう。
調達物流費
調達物流費とは原材料を調達する際にかかる物流コストのことです。製品原価に含めて計上するケースもあります。
調達物流費が増加すると必然的に製品の販売価格自体が高くなるため、競合の方が安いという事態にもなりかねません。調達物流はとても重要な項目で、適切にコントロールできるかが鍵となります。物流プロセスを統合管理するよりも、ほかの原価項目と明確に区別して分類することが望ましいです。
社内物流費
社内物流費は以下の6つに分類されることが多いです。
- 内輸送費
- 社内保管費
- 社内梱包費
- 社内流通加工費
- 社内情報処理費
- 社内物流管理費
社内物流費は物流費としてではなく、他のコスト内に含まれていることもあります。
販売物流費
販売物流費とは商品を販売する際にかかるコストのことです。調達物流費を除く全ての物流費を販売物流費とするケースも多いです。
物流コストの構成比率
物流コストを分析して改善を図りたい場合、ここまで紹介してきた各費用の割合について把握する事が重要です。その上で適正バランスを保ち、コストカットに繋げる必要があります。
日本ロジスティクスシステム協会が公開している「物流コスト調査報告書」のデータを元に支払形態別の費用構成比を算出すると以下のようになります。
支払物流費 | 社内物流費 | |
構成比率 | 87% | 14% |
支払物流費のコストが大多数を占めていることが分かります。次に、物流機能別の構成比をみていきましょう。
輸送費 | 保管費 | その他 | |
構成比率 | 55% | 16% | 29% |
物流機能別の構成比率では輸送費が半分以上を占めていることが分かります。ただし、上記数値は全業種で企業の規模を加味しているわけではありません。業種によっては構成比率が前後するため、上記数値を参考に計算をしてみてください。
物流コストの削減が重要な3つの理由
昨今、物流コストの削減が必要であると盛んに叫ばれています。なぜ、ここまでコスト削減に注目が集まっているのかと言えば、以下3つのような理由が関係しています。
- 物流の需要に対してドライバー不足が深刻化している
- 燃料費の高騰が続いている
- 物流の2024年問題によりさらなるコストアップが見込まれている
各理由の詳細について解説していきます。
物流の需要に対してドライバー不足が深刻化している
新型コロナウイルスの影響によって、商品を調達する手段として物流に注目が集まり、多くの方が利用するようになりました。この流れは、新型コロナウイルスが落ち着きつつある2023年になっても定着しています。
一方で、物流業界全体として大きな問題となっているのがドライバー不足です。ドライバーの需要に対して人数が足りておらず、50代以上のドライバーが業界全体の約4割を占めている状況です。
これにより、コストアップが着々と進んでいるため、コスト削減が必要となっています。
燃料費の高騰が続いている
燃料費の高騰もコスト削減が必要な理由の1つです。燃料費が高騰している理由は、OPECプラスに参加している産油国が減産しているためです。
これにより、世界の石油の在庫が減少し、2021年頃から徐々に原油価格が高騰し続けています。また、新型コロナウイルスの影響により落ち込んだ需要が世界的に回復傾向にあるものの、多くの産油国で増産余力がない状況が続いています。
物流の2024年問題によりさらなるコストアップが見込まれている
物流業界において「物流の2024年問題」も切り離せない問題です。物流の2024年問題とは働き方改革により労働時間の上限が設けられたことで発生する課題のことです。数年前から影響が懸念されていましたが、間近に迫りつつある今、具体的なコスト削減が必要となっています。
ドライバー業界では働き方改革が続く中でも長時間の労働が必要でした。しかし、働き方改革でドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることになったのです。1人あたりの労働時間に限りがあり、走行距離が短くなることで、長距離の物流に対応する従来の方法が通じなくなりました。
また、時間外労働の賃金が50%増加となったことから、人件費のコストアップが見込まれています。
物流コストを削減する5つのポイント
物流コストの削減が必要になっている中、どのようにコストダウンを図るかが重要です。そこで、物流コストを削減する方法を5つ紹介します。
- 人件費や管理費を徹底的に見直す
- 物流拠点を集約する
- 3PLを活用する
- 作業時のルールを策定する
- 在庫管理の最適化を図る
各ポイントについて、詳しくみていきましょう。
人件費や管理費を徹底的に見直す
物流コストの中で、圧倒的な割合を占めているのが人件費や管理費です。まずは最もコストがかかっている項目を対象に改善を図ることが重要です。人件費は何もしない限りは今後さらにコストアップするでしょう。そのため、業務における無駄を排除し、効率よく業務できるように改善を図る必要があります。
人が行っている作業を機械化したり、システムで置き換えたりなどの方法を取り入れることでコスト削減に繋がります。
システム導入には費用がかかりますが、費用対効果を考えればコストダウンに繋がる可能性が高いです。
物流拠点を集約する
規模の大きな物流業者の場合、拠点を多く抱えているところもあります。物流拠点を多く抱えることによって管理費や維持費が高くなり、輸送コストも大きくなります。コストダウンのためには物流拠点を集約するのがおすすめです。
倉庫内の荷物を棚卸しても余裕量がある場合はほかの拠点と集約することで管理費用などを削減可能です。また、拠点の集約によってトラックの積載率をアップでき、同じコストで多くの商品を運べるようになります。
3PLを活用する
外注費を抑えるために物流業務を委託する3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)と呼ばれる方法を活用するのもおすすめです。
3PLを利用することで物流業務を外注化し、人件費や物流拠点の維持費、運送費などの固定費を変動費化できます。外注化することで物流の量が少ない時期にコストダウンを図れるほか、不良在庫の削減も期待できるなど多くのメリットがあります。
作業時のルールを策定する
物流倉庫においてルールを策定することで業務効率を高められます。特に、作業現場などでは5S活動が重要となります。
5S活動とは以下のSを目標として、改善を図る活動のことです。
- 整理
- 整頓
- 清掃
- 清潔
- しつけ
5S活動は製造業や建設業などで用いられていた活動でしたが、物流においても取り入れられます。5S活動を取り入れることにより作業ミスや事故の防止にもつながり、社員のモラル向上が期待できます。
在庫管理の最適化を図る
コストダウンを図るためには在庫管理の最適化も重要です。拠点の集約化を検討すると同時に今の倉庫が適切なサイズなのか、抱えている在庫量自体が適切かどうかを分析する必要があります。
適正在庫量を把握して今よりも在庫を減らせるのであれば、倉庫の立地や広さを変更することで賃借料の削減が可能です。さらに、在庫量を減らすことで入出庫の管理や在庫調整の作業、管理費用を抑える効果も期待できます。
在庫量の最適化を図る上で5S活動を並行して実施すると、さらに高い効果を得られるでしょう。
まとめ
物流業界では、喫緊の課題として2024年問題を抱えています。また、ドライバー不足も深刻化している中で、コストアップが見込まれるなど不安要素も多いです。
そこで、今までどおりの対応を図っていては、コストアップして経営を圧迫しかねません。そこで、今回紹介したように物流コストについて正しく理解して、コスト削減を図る必要があります。
コスト削減は経営者だけでなく、社員一人ひとりが取り組む必要があるため、理解を得ながら適切に対応してください。