輸出や輸入を行う企業の担当者の方の中で、国際的な物流会社について詳しく知りたいという方もいるのではないでしょうか。日本と海外とを結ぶ国際物流会社は、貿易を行う会社にとってコストに大きく関わるため、知識を深めておいて損はありません。
この記事では、日本企業とも取引することが多い海外の物流会社と、国内の国際物流を扱う会社を紹介します。国際物流に関する基礎知識をあわせて学べるので、国際的な物流に関する知識を獲得していきましょう。
国際物流とは?
国際物流とは、日本と諸外国との間で行われる取引時の物の流れのことを指します。国際物流では必ず国境を超えるため、税関手続きが必要です。また、運搬する貨物も長距離の移動に耐えられるよう、厳重に梱包しなければいけません。
日本における国際物流は、船と飛行機で行われます。国内物流とは異なり荷物が届け先に届くまでに多くの物流業者を経由するため、ビジネスで利用する際は計画的に配送を行う必要があります。特に国際物流の経験が少ない企業が利用する際は注意が必要です。
国際物流と国内物流との違い
国際物流と国内物流にはいくつかの違いがあります。例えば、国内物流では、主な輸送手段はトラックです。国内を移動する荷物の半数がトラックによって輸送されます。また、日本では国内物流に船も多く利用されており、国内を移動する貨物の約4割が海運で運搬されています。
一方で、国際物流では船と飛行機が輸送手段の主体です。欧米などの場合鉄道による国際物流もありますが、島国である日本では物理的に輸送が不可能なため、行われていません。
国際物流と国内物流の違いは輸送手段以外にもあります。それは税関の存在です。国境を越える国際物流では必ず税関を通らなければいけません。税関で違法な品を輸出入していないかを厳しく検査されます。
国際物流は何をする?
国際物流の概要と国内物流との違いを把握したところで、国際物流の内容を解説します。国際物流では次の4つの作業を行わなければいけません。
- 梱包
- 輸送
- 税関手続き
- 情報管理
ここからはそれぞれの項目について、詳しくみていきましょう。
梱包
国際物流では、国内物流よりもはるかに長い距離を荷物が移動します。そのため、貨物を頑丈に梱包しなければいけません。
また、船による輸送の場合、荷物の上に重量物が乗っても問題ないように頑丈に梱包します。しかし、飛行機による輸送の場合、軽くしなければいけません。
さらに、梱包と同時にインボイスやパッキングリストなどの書類を用意する必要があります。この書類は必ず荷物とともに発送しなければいけないので、忘れないように注意しましょう。
輸送
日本と諸外国とで輸出入をする際は、必ず船か飛行機で輸送します。船と飛行機ではそれぞれにメリットデメリットがあり、運ぶものによって適性が異なります。
船の場合、輸送するものの大きさや重さに制限がないうえに安く大量に運べます。しかし、船の場合、輸送に時間がかかることを考慮しなくてはいけません。
一方、飛行機の場合、輸送するものには制限があります。また、運賃は船に比べて高くなりますが、その分早く荷物を運ぶことが可能です。
税関手続き
輸出入を行う際は、必ず税関を通らなければいけません。輸出と輸入とでは税関を通るときに必要な手続きが異なるため注意が必要です。
輸出の際はインボイスやパッキングリスト、シッピングインストラクションなどの書類を作成しなければいけません。
一方で、輸入の際は、荷物を受け取る側は特別な手続きは必要ありません。なぜなら、輸出する際に送り主が行うからです。税関での手続きが問題なく完了すれば荷物が配送されます。
情報管理
国際物流を利用する上で情報管理は非常に重要です。貨物を輸入する場合、いつ日本に到着するかを把握しておかなければ業務に差し支えます。日本への到着時期を把握するためにも荷物の現在位置が重要です。
現在では、海外から日本へ運ばれる荷物の位置情報を追跡することが可能です。荷物の追跡は、輸出入の際に安全に運ばれているかを知るための手段で、輸出入を行う際は位置情報を追跡し、荷物が安全に運搬されているか確認しなければいけません。
国内の大手国際物流会社比較5選
ここからは国内外の大手国際物流会社を紹介します。国内の大手国際物流会社は次の5社です。
- 日本通運
- 郵船ロジスティクス
- 近鉄エクスプレス
- ロジスティード
- 日新
それぞれの国際物流会社を詳しく見ていきましょう。
日本通運
引用元:日本通運公式HP
- 日本トップクラスの物流ネットワーク
- 圧倒的な専門輸送の実績
- 多様化するニーズに対応するソリューション
日本通運は国内で圧倒的な規模の流通拠点を持ち、海外でも欧米とアジア、オセアニア地域を中心に数多くの拠点を所有しています。国内の倉庫面積と物流ネットワークは日本トップクラスで、あらゆる物流の要望に対応可能です。
国際輸送では輸出と輸入の両面で付加価値サービスを提供していて、顧客のニーズにあわせた輸送サービスを提供しています。また、柔軟なフォワーディングにより世界33の国と地域でドアツードアを実現可能です。
さらに、日本通運では高度な技術と知識が必要な専門品の輸送を取り扱っています。そのため繊細な注意が必要な荷物の運搬を得意としています。
郵船ロジスティクス
引用元:郵船ロジスティクス公式HP
- 独自ネットワークと現地の専門知識による国際物流ソリューション
- 品質とコストを両立させたビジネスサポート
- サプライチェーン全体の最適化提案
郵船ロジスティクスは、国内の海運大手である日本郵船の完全子会社です。世界47の国と地域に600を超える拠点を所有し、あらゆる国際物流の課題を解決するためのソリューションを提供しています。
国際物流では海上と航空、トラックと鉄道などあらゆる輸送手段を組み合わせることで物流の最適化が可能です。航空輸送と海上輸送でそれぞれの特徴を活かし、安全で確実な輸送を実現しています。
郵船ロジスティクスは、ヨーロッパとの国際物流を得意としており、ヨーロッパ各国に複数の拠点を構え、国際物流を提供しています。
近鉄エクスプレス
引用元:近鉄エクスプレス公式HP
- 中国とインドで強いネットワーク
- 日本発の航空貨物専業の物流会社
- 原材料からヘルスケアまで高い信頼性と品質の輸送サービス
近鉄エクスプレスは、日本初の航空貨物専業の物流会社として誕生しました。もちろん、海上輸送でも豊富な実績を持ち、45の国と地域にある600以上の拠点で国際物流サービスを提供可能です。
近鉄エクスプレスは中国とインドとの国際物流を得意としており、日本の物流会社ではインドと最大のネットワークを構築しています。また、中国とインドでも日本同様に自社倉庫を構え、日本と変わらないサービスの提供が可能です。
ロジスティード(旧日立物流)
引用元:ロジスティード公式HP
- 豊富な実績を持つ3PLのパイオニア
- 陸・海・空を複合的に使った一貫輸送
- 国内外あわせて800を超えるオペレーション拠点
ロジスティードは、日立物流として知られている企業間の輸送においては国内大手の輸送会社です。3PLのパイオニアとして知られており、1980年代から高品質なサービスを提供してきました。
世界各国にグループ会社を持ち、その拠点数は国内とあわせると800以上と巨大なネットワークを構築しています。そのため、国際物流では陸海空を組み合わせた一貫輸送で、荷物を最終目的地まで安全かつ確実に輸送可能です。
東アジアと東南アジア地域での国際物流を得意としており、アジア太平洋地域に強いネットワークを構築しています。
日新
引用元:日新公式HP
- 国内外の設備移転のエキスパート
- 日本の国際物流のパイオニア
- 通関専門スタッフが税関手続きをサポート
日新は、日本における国際物流のパイオニアとして、日本と海外の輸送を長年担ってきました。長年のノウハウと情報管理・提供システム、さらに通関専門スタッフにより顧客の税関手続きを完全にサポートします。
日新では国内海外問わず、プラントや設備の輸送を得意としており、プラントや設備を輸送するだけでなく、輸送先での据え付けも可能です。古い設備の解体から新しい設備の据え付けまで顧客の要望にあわせた施工を行います。
ヨーロッパとアジアを得意としており、両エリアでは綿密なネットワークを構築し、国際物流サービスを提供しています。
海外の大手国際物流会社比較6選
次に国外の大手国際物流会社を紹介します。日本でも利用されることの多い海外の国際物流会社は以下の6社です。
- FedEx
- UPS
- DHL
- キューネ・アンド・ナーゲル
- DSV
- DBシェンカー
それぞれの国際物流会社を詳しく見ていきましょう。
FedEx(アメリカ)
引用元:FedEx公式HP
- 国際物流でもスピーディーな一貫輸送
- 通関のスペシャリストが税関手続きをサポート
- ニーズにあわせた最適な国際物流ソリューション
FedExはアメリカに本社を置く、国際物流会社です。220の国と地域で物流サービスを提供し、最短で1〜2営業日での輸送も可能です。全世界に物流ネットワークを構築しているFedExは輸送スピードにこだわっています。そのため、海上輸送で運ぶような大型の荷物を航空輸送で運ぶことも可能です。
輸出に必要な税関手続きもFedExのスペシャリストがサポートします。FedEx専属の通関スタッフが税関のあらゆる手続きをサポート可能です。また、独自開発したオンラインツールを提供しているため、税関手続きに必要な書類作成も容易に行うことができます。
UPS(アメリカ)
引用元:UPS公式HP
- ドライバーから航空機まで自社所有で一貫輸送
- 独自のWMSとTMSによるキャパシティ管理
- 世界中で時間指定可能な配達ネットワーク
UPSは、FedExと同じくアメリカに本社を構える国際物流会社です。大型の荷物よりも宅配のような小規模な輸送を得意とし、安価な輸送料金のため世界中で利用されています。日本ではヤマト運輸と業務提携をしていて、高い品質の輸送を確立しています。
UPSは国際物流用の専用機を所有しているため、国によっては自社一貫で輸送可能です。独自開発した輸送管理システムは、全世界の荷物の輸送状況を常に管理することができます。また、倉庫管理システムも独自開発し常に高い輸送キャパシティを確保しています。
DHL(ドイツ)
引用元:DHL公式HP
- 通販から大型貨物まで幅広い国際物流サービス
- 1,500の拠点による巨大物流ネットワーク
- 物流から市場開拓までビジネスを総合的にサポート
DHLは、ドイツに本社のある国際物流会社です。ドイツ連邦郵便が前身のDHLは、国際的な通販の宅配から大型貨物の輸送まで幅広い物流サービスを提供しています。また、世界中に構築した物流ネットワークにより、最短翌日でドアツードアの配達も可能です。
法人利用ではニーズにあわせた最適な物流サービスを提案し、国際物流の課題を解決します。近年発展している越境ECにおいても、ビジネス規模に関係なく物流から新規市場開拓までサポートします。
DHLの国際物流は自社所有機による輸送が可能なため、社会情勢の影響を受けません。
キューネ・アンド・ナーゲル(スイス)
- フォワーダーとしては世界トップクラス
- 総合的な物流サービスで入荷から発送までをトータルサポート
- 専門スタッフによるスピーディーな通関処理
キューネ・アンド・ナーゲルは、スイスに本社のある国際物流会社です。設立は19世紀と歴史が古く、第2次世界大戦以降急速に世界的なネットワークを拡大してきました。スイスを本拠とするキューネ・アンド・ナーゲルはヨーロッパとアフリカを得意とし、国際物流サービスを提供しています。
陸海空あらゆる輸送手段に精通したキューネ・アンド・ナーゲルは、全ての輸送手段で安全かつ確実にサービスを提供します。さらに、近年の気候変動にも対応し、CO2を削減しながら最適な方法で輸送が可能です。
DSV(デンマーク)
引用元:DSV公式HP
- 世界3位の3PL
- 成長途中で事業拡大中
- ニーズにあわせた適切なソリューション提案
DSVは、デンマークに本社を置く国際物流会社です。国際物流会社の中でも比較的新しい会社ですが、ヨーロッパの物流会社を買収することで成長しました。創業から20年ほどはヨーロッパのみで事業を展開していましたが、2000年から本格的な世界展開を行っています。
DSVは産業用の設備の輸送から通販の発送代行まで行う、総合的な物流事業を展開しています。また、顧客にあわせた最適な物流サービスを長年提供していて、最近では培ったノウハウとIT技術を合わせたシステムを構築しました。
近年も北米の物流会社を買収し、成長を続けているため注目を集めている国際物流会社です。
DBシェンカー(ドイツ)
引用元:DBシェンカー公式HP
- 航空輸送と海上輸送を融合させる輸送システム
- 独自プラットフォームによる貨物をリアルタイム管理
- 顧客のビジネスにあわせて専門家が物流提案
DBシェンカーはドイツの国営鉄道会社の子会社の国際物流会社です。陸海空の全ての輸送手段を用意し、その上で航空輸送と海上輸送を融合し、コストとリードタイムを両立した輸送が可能です。
DBシェンカーでは独自開発したプラットフォームを使い、全世界で輸送中の全ての貨物をリアルタイムで管理しています。万が一輸送中に貨物を開封されるようなことがあれば、すぐにアラートが発信されるため、トラブルにも迅速に対応可能です。
また、常に新しい物流ソリューションを開発し、効率的な物流システムの構築を模索し続けています。
まとめ
この記事では国際物流の基礎知識と、世界で事業展開する国際物流会社を紹介しました。海外と荷物のやり取りを行う国際物流では必要となる知識が異なるため、慣れていないと難しいこともあります。そのような際は、この記事で紹介したような国際物流会社に相談しましょう。
国際物流会社も得意とする分野や地域が異なるため、選ぶ際はコストの他にも輸送手段などを比較しなければいけません。貿易などで国際物流会社を選ぶ機会があれば、この記事の内容を参考に、検討してみてください。